投資を始めようと思い立った時に、まず最初にぶつかるのが「何がわからないのかわからない」という状態だと思います。
それは例えるなら、いざ始めたRPGゲームにゲーム内ガイドがなく、装備もまったくない状態で、だだっ広い荒地に放り出されているような感覚だと思います。
であれば、投資という新たな冒険を実りあるものにするべく、まずは基本的な装備から整えてしまいましょう。
ということで、この記事では投資歴7年の釈迦が思う投資初学者が最初に身につけるべき基礎用語を1ページにまとめました。
金融取引
まず初めに金融取引というワードから入りましょう。
金融取引とは、金融資産を売買することで利益を得ようとすることです。
上の図のように買い手と売り手の2人が揃うことで取引は成立します。
買い手の「欲しい」という欲望が金融市場では価格を釣り上げていきます。
また、売り手の「手放したい」という欲望が金融市場では価格の下落を引き起こします。
日常生活で考えてみても、欲しいものがお店で売られていたら少し高くても奮発してしまいますよね。
また、閉店間近のお店が在庫処分のために閉店セールで値下げをしたりしてますよね。
この両者の欲望によって金融資産の価格は上下するために、株価などはギザギザの形になるわけです。
相場観(シナリオ)
続いて、投資家は何を根拠に売ったり買ったりするのかということを考えていきたいです。
投資家はそれぞれの相場観(シナリオ)「今後どうなっていきそうか?」を緻密に考えて取引をしています。YouTubeや証券会社のレポートなどで金融のプロたちが相場の見通しを解説していたりしますよね。
彼らは整理された相場観に基づいて投資の意思決定をしています。
プロではない僕たち個人投資家も整理された相場観を持つ努力をすると良いと思います。
理由は、いろんな情報に惑わされて右往左往しないためです。あまり良くわかっていない会社の株を買ってしまうと、下がった時に不安になってしまったり、仕事中も株価が気になってしまったり、精神衛生上よろしくないです。
相場観(シナリオ)を作った上で投資行動に移ると、日々の値動きに右往左往することなく、日々の値動きによって自分の相場観を検証するという姿勢で向き合えます。自分の相場観がどれほど適切だったか、答えを相場は教えてくれるのです。
そうして長年、試行錯誤を繰り返していると、いつの間にか運用成績が積み上がっていることに気づきます。
ファンダメンタルズ分析
では次に、具体的にどのような情報に基づいて相場観を作っていくかを考えます。
経済を見るファンダメンタルズ分析とチャートを見るテクニカル分析があります。
どちらも重要ですが、先にファンダメンタルズ分析ではどのような視点で経済を見ていくかまとめていきます。
景気サイクル
景気とは経済活動の状況を示します。景気は4つの時期を順番に巡りながら成長していき、その循環を景気サイクルと言います。そして、株式相場も景気サイクルに応じた4つの相場を順番に巡ります。
政策金利
景気サイクルの手綱を握っているのは政策金利です。
政策金利とは、中央銀行が操作できる短期の貸出金利になります。
中央銀行は国の中核になる銀行で、物価の安定を主な目的として、政策金利を調節します。
簡単にいうと、お金が出る蛇口の開け閉めをしているということです。
具体的には政策金利を下げること(利下げ)で、貸出金利を低くし個人や企業がお金を借りて活動しやすい状況を作ります。逆も然りで、政策金利を上げること(利上げ)で、貸し出し金利を高くし個人や企業がお金を借りて活動しずらい状況を作ります。
では、具体的に政策金利に着目しながら4つの景気サイクルと株式相場を見ていきましょう。コロナウイルスが感染拡大した2020年を例にとるとわかりやすいため、実際の値動きも見ていきます。
⑴金融相場(回復期)
金融相場の初期では、景気を下支えするために中央銀行による政策金利の引き下げ(利下げ)などの金融緩和政策が発表されます。
金融緩和される局面では、投資家はリスクを積極的に取る行動に移ります。より成長性の高いIT関連やIPO銘柄など「グロース株」に資金が流入しやすいです。
コロナウィルスが感染拡大した2020年を例にとると、2020年3月3日FRB(アメリカの中央銀行)が緊急会合を開き、全会一致で0.5%の大幅な利下げを決めました。それでも株式市場の下落が止まらず同年3月15日にはさらに1.0%の緊急利下げを実施しました。わずか1ヶ月で政策金利が1.50-1.75%から0.00-0.25%へ1.50%の大幅な利下げとなった歴史的な事例です。
アメリカの大企業500社の株価を平均したS&P500指数は2回目の利下げ後に底を打って、V字回復していきました。
そして、金融相場の後期では投資家は次に来る業績相場に備えて業績を気にしはじめます。
⑵業績相場(好況期)
金融相場の次に訪れるのが業績相場です。金融緩和によって流れ込んだマネーが設備投資に周り、企業業績の改善が見られます。
企業業績が改善していく局面では、投資家は引き続きリスクを積極的にとります。景気変動の影響を受けやすい自動車株や半導体株など「景気敏感株」に資金が流入しやすいです。
コロナ禍で大躍進を見せたZoom社は、2020年8〜10月期の決算では売上高成長率+367%と前年同期比で4倍を超え、株価も1年前の4倍以上となりました。
そして、業績相場の後期では投資家は次に来る逆金融相場に備えてインフレを気にしはじめます。
⑶逆金融相場(後退期)
続いて訪れるのが逆金融相場です。景気が良くなると、雇用が増え給料が増え消費意欲が高まります。供給を上回るほど需要が大きくなると物やサービスの値段(物価)が上昇します。インフレです。
景気が良くなり過ぎてインフレが急速に進むバブル経済は崩壊した時の谷が深くなるため、中央銀行はインフレを抑える金融引き締め政策を発表します。利下げを実施する金融相場とは逆の利上げを実施します。
金融引き締めされる局面では、投資家はリスクを積極的に避ける行動に移ります。景気変動の影響を受けにくい電力・ガスや食品など「ディフェンシブ株」に資金が流入しやすいです。
利下げを発表した2020年3月の2年後、2022年3月15日、16日にFRB(アメリカの中央銀行)の会合で0.25%の利上げを開始しました。その後、同年7月13日にはアメリカのインフレ率が前年比9.1%と歴史的な高インフレを記録しました。
S&P500指数は2020年の利下げ後からV字回復したのち、利上げ前にピークを迎え調整入りしました。
そして、逆金融相場の後期では投資家は次に来る逆業績相場に備えて業績や雇用を気にしはじめます。
⑷逆業績相場(不況期)
逆金融相場の次に訪れるのが逆業績相場です。金融引き締めによって設備投資が減り、企業業績や雇用の鈍化が見られます。
企業業績が鈍化していく局面では、投資家は現金を保持するなどさらにリスクを積極的に避けます。景気変動の影響を受けにくい「ディフェンシブ株」のなかでも医薬品株は値下がり幅が小さいと言われています。
コロナ禍で大躍進を見せたZoom社でしたが、感染拡大も落ち着き出社が再開されると成長率は一桁台に鈍化し、株価も鳴かず飛ばずになっています。
そして、逆業績相場の後期では投資家は次に来る金融相場に備えて中央銀行の動向を気にし始めます。
テクニカル分析
最後にテクニカル分析です。
初めに伝えておきたいのがテクニカル分析はチャートに線を引いたり簡単にできてわかりやすいため、盲信してしまいがちですが裏切られる可能性があります。裏切られる大半の理由は、経済指標や決算などのサプライズといったファンダメンタルズ要因がほとんどです。
ファンダメンタルズ分析で大きな流れを把握した上で、テクニカル分析で売買タイミングを決めるという方法が王道です。
また、テクニカル分析では自己流でやるのではなく「みんなが見ている」ものだけを見ましょう。理由は後ほど解説します。
では、チャートをどのような視点で見ていくかまとめます。
ロウソク足
まずはチャートの最小単位であるロウソク足から見てみましょう。
ロウソク足は取引時間中の値動き(始値、終値、高値、安値)を1本のロウソク形状で表した物です。終値が始値よりも高ければ陽線、終値が始値よりも低ければ陰線といいます。
また、ロウソク足の形状にはいろいろな名称がついていますが全て覚える必要はありません。大事なのは相場の局面ごとのヒゲと実体(始値と終値の間)の長さです。
安値圏では下ヒゲの長さに注目すると良いです。売り優勢から買い優勢に反転し安値をつけた後に上昇すると、長い下ヒゲが出現します。
その後の上昇局面では実体の長さに注目すると良いです。買い優勢が終日続くと長い実体が出現します。
高値圏では上ヒゲの長さに注目すると良いです。買い優勢から売り優勢に反転し高値をつけた後に下落すると、長い上ヒゲが出現します。
その後の下落局面では実体の長さに注目すると良いです。売り優勢が終日続くと長い実体が出現します。
ロウソク足に関してはこれだけ把握していれば十分です。
レジスタンスライン/サポートライン
続いて、レジスタンスライン/サポートラインです。
相場の流れが変わる際に必ずブレイクアウト(ラインを超えること)するため盲信は要注意です。
では、相場の流れとともにチャートを見ていきましょう。
まず、赤線は切り下がっている高値を繋げたレジスタンスラインです。傾きが斜め下のレジスタンスラインが引けた時は売り勢力が強い下落局面と判断できます。レジスタンスラインに近づくと反落する可能性が高く売り時です。下落局面の終盤では短期間中に複数回レジスタンスラインに近づき、ブレイクアウトします。
ブレイクアウト後の高値は他の高値や安値と同じ水準であることが多く、白線のようなレジスタンスにもサポートにもなっている水平線が引けます。水平線は横ばい局面の上限と下限に出現しやすく、売り勢力と買い勢力が拮抗している局面と判断できます。横ばい局面の終盤では短期間中に複数回水平線に近づき、ブレイクアウトします。
続いて、緑線は切り上げている安値を繋げたサポートラインです。傾きが斜め上のサポートラインが引けた時は買い勢力が強い上昇局面と判断できます。サポートラインに近づくと反発する可能性が高く買い時です。上昇局面の終盤でも短期間中に複数回サポートラインに近づき、ブレイクアウトします。
これらのラインは厳密に反発するとは限らず、超えた後に戻ってくる(だまし)場合やタッチせずに反発する場合もあります。
チャートパターン
続いて、チャートパターンです。
歴史的にトレンド転換時には似たようなチャート形状が出現することがあります。事前にトレンド転換を察知できるかもしれないので頭の片隅に置いておくとよいですが、必ずしも綺麗なチャートパターンが出現するわけではないので「あのチャートパターンぽいかも」程度で見れるようになれば良いと思います。
ダブルトップ/ダブルボトム
ダブルトップはM字をしており、中央の谷のラインを下回ると完成し、下落シグナルです。
ダブルボトムはW字をしており、中央の山のラインを上回ると完成し、上昇シグナルです。
三尊/逆三尊
三尊は三つの山を形成し、2つの谷を繋いだラインを下回ると完成し、下落シグナルです。
逆三尊は三つの谷を形成し、2つの山を繋いだラインを上回ると完成し、上昇シグナルです。
インジケーター
インジケーターとは、特定の計算式によって算出された情報をチャート上に表示してくれるものです。
インジケーターは数多く提供されており、複数表示してしまうと逆に分析の妨げになるので、シンプルで「みんなが見ているもの」を2、3個に絞って利用するのが良いと思います。
テクニカル分析は「みんなが見ている」ということが最重要です。理由は、あるインジケーターを見てここで反発すると感じた投資家が多ければ多いほど買い勢力または売り勢力の片方が強まり、そのインジケーターは効くからです。
インジケーターにはトレンド系とオシレーター系があるのでそれぞれ1つずつ、王道のものを紹介します。
トレンド系インジケーター
トレンド系インジケーターは、今後の相場の「方向性」を判断する際に活用できるインジケーターです。
単純移動平均線(SMA)を紹介します。
単純移動平均線は、設定した期間の終値の平均値を示しています。12日、25日、50日、200日が王道の設定です。
僕は50日と200日の2つを普段使っていて、50日移動平均線は中期的なトレンド判断、200日移動平均線は長期的なトレンド判断に使っています。
移動平均線は、補給部隊として考えるとわかりやすいです。チャートの値動きが最前線だとして後から物資を運ぶ補給部隊(移動平均線)がついてきます。上昇局面において、買い勢が進軍し売り勢の本拠地(直近高値)に到達すると、反転攻勢で売り勢に押し戻されます。しかし、補給部隊の移動平均線まで戻ってくると体制を立て直して買い勢が再び進軍し売り勢の本拠地を制圧するといった流れで高値を更新していきます。
オシレーター系インジケーター
オシレーター系インジケーターは、現在の相場の「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」を判断する際に活用できるインジケーターです。
RSIを紹介します。
RSIは、設定した期間中の変動幅に対する上昇率を示しています。14日が王道の設定で、70%以上が「買われ過ぎ」30%以下が「売られ過ぎ」とされています。
僕も14日を使っていて大体の反転タイミングを掴むために表示しています。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。
これから金融取引で利益を得るにあたって、整理された相場観を作るために経済とチャートを読み解いていくという基本的な相場への向き合い方が頭に入っていれば幸いです。
これからも随時、相場観など投稿していきますので引き続きお役に立てるよう精進してまいります。
それでは、また。